子どもの運動神経が悪いかも…と心配している親御さんのなかには、コーディネーショントレーニングが気になっている人もいるのではないでしょうか。運動不足の子どもも増えているなか、運動神経を改善してあげたいと考えていると思います。そもそもコーディネーショントレーニングとはどのようなものなのか、効果やおすすめのメニューについても詳しく解説します。コーディネーショントレーニングが気になっている人は、まずは自宅でできるトレーニング方法に挑戦してみてください。

コーディネーショントレーニングとは?

コーディネーショントレーニングとは、手足や指などの全身各部位の決められたルールに従い、協調運動で行うトレーニング方法のことをいいます。コーディネーションとは「調整」を意味する言葉で、体の動きや力加減を調整したり、運動神経を鍛えるためのトレーニングです。体の重心を感じてバランスをとる動きや、複数の動作をスムーズに行う事、音のリズムに合わせて動作することで多くの能力を磨きます。

コーディネーショントレーニングは1970年代に現ドイツにて生まれたものです。当時、スポーツの世界では体力やテクニックを向上させるだけでなく、全身の機能を高めるためのトレーニング方法が求められていたそうです。脳+体を同時に鍛えられるトレーニング方法として考案されたものになり、思考力や集中力を鍛える効果も期待されています。その後、世界中のアスリートに取り入れられたことで健康維持にも役立つ方法として認識されています。

1990年代に日本のアスリート育成を目的に導入され、現在は子どもの運動能力向上の目的に取り入れられています。コーディネーショントレーニングは、さまざまなスポーツの「フォーム」や「型」を短期間で取得することもできます。

コーディネーション能力と運動神経の関連性

コーディネーション能力と運動神経は深く関係しているといわれています。運動神経が良い=コーディネーション能力が高いともいえます。人間は、脳から出た命令を信号として体の神経に伝え動かしています。

神経回路の成長は、幼児期や児童期にさまざまな運動をすることでより連結しやすくなるといわれており、密接に関係しています。連携がうまくできるようになると、思い通りに体を動かすことができる=コーディネーション能力が高いといわれています。

思い通りに体を動かせないと、自分の体が持っている能力を十分に発揮できなくなってしまいます。運動神経が悪い=神経回路の発達が足りていないと、スポーツが下手だったり不器用な動きをしてしまいます。

コーディネーショントレーニングは小学生など子どもにおすすめ?

コーディネーショントレーニングは、小学生にこそおすすめといえます。神経回路は子どもの頃に急激に成長したあと5歳で成人の80%、12歳で100%に達するといわれています。この時期にいかに神経回路を伸ばせるかどうかによっても運動神経が変わってしまいます。

さまざまな動きを経験するほど、神経系が刺激されるようになり運動神経が良くなると考えられています。実際に日本のトップアスリートの6割は、幼少期に毎日2時間以上遊んでいたともいわれ、自身の神経回路を刺激しています。小学生の頃にこそ、運動で体を動かす機会を増やせるような工夫が欠かせません。コーディネーショントレーニングを積極的に取り入れるようにしていきましょう。

コーディネーションにおける7つの能力

コーディネーション能力は、7つの能力に分類できます。それぞれ個別の能力として考えるのではなく、何かしらの動作や運動のときに双方が連動して発揮する能力としても知られています。そのため、すべての能力をバランスよく鍛えていくことが大切だといわれています。7つの能力について詳しく紹介します。

定位能力

相手やボールなど、自分との位置関係や距離を把握するための力のことをいいます。例えば、サッカーでロングパスでボールを蹴るときやボール投げで相手との距離を把握するための力です。他にも、人とぶつかることなく走るための力や、縄跳びを跳ぶなどのさまざまな動きに繋がってきます。スポーツだけでなく日常生活のなかでも必要となる能力になります。

バランス能力

体の平衡感覚を保つための能力になり、歩くときや走るときに限らず立っているときにも日々使っている能力として知られています。体制が崩れたときにも立て直すための力になり、不安定な場所でも体勢を保ちつつ、動くための力のことをいいます。体のバランス能力を高めることで転倒リスクを減らしつつ、運動能力を向上させることにも繋がります。

リズム能力

音楽や運動のリズムに合わせて、体を動かすための能力のことをいいます。日々の生活やスポーツでもリズム能力は欠かせないものになり、ダンス以外にも体操でも重要になってきます。手拍子をとったり、メトロノームの動きに合わせてジャンプしてリズムを体で感じるためのトレーニングを行います。行動をスムーズに行うためにもリズム能力は欠かせないものになります。

反応能力

周囲の状況の変化に合わせて適切な反応を示すのが反応能力です。スポーツによっては相手の動きに対して素早い反応が要求されますが、脳が判断して体と連携させることでスムーズな動きに繋がります。例えば、短距離走で合図と同時にスタートが切れるのも反応能力です。サッカーや野球でボールをとるために素早い動きができるようになるための力でもあります。

連結能力

異なる動作をスムーズに連携させるための能力のことをいいます。日常的に必要なものになり、サッカーでボールを使って蹴る、ドリブルをする動きにも関係してきます。野球では移動したあとにボールをとり投げるまでの動作をスムーズに行うものです。流れるような自然な動きができるようになるためにも必要な能力になり、道具を使ったスポーツが上達しやすくなります。

分化能力(識別能力)

視覚や聴覚などの情報を正確に理解したうえで、適切な反応を行うための能力のことをいいます。スポーツのときに相手の動きを予測するための能力といっても過言ではありません。手や足の動きはもちろん道具を意図したままに操作するための能力のことをいいます。必要なときに力を入れるのはもちろん力を抜く、徐々に強めていくなどの器用さにも直結します。

変換能力

そのときの状況に合わせてすばやい動作を行い、切り替えるための能力です。急な変化に対して適切な動きをとるための力になり、そのときの状況を判断して体を操作するなどの動きが複合的に関わっているものです。例えば、サッカーをしているときに走りながらボールを蹴る、ドリブルシュートをするなどの連携した動作を行う力のことをいいます。スポーツのパフォーマンス力を高めて、動作のスムーズさを改善します。

コーディネーショントレーニングの主な効果

コーディネーショントレーニングにおける具体的な4つの効果を説明します。

動作や技術の習得スピードが向上する

そのときに必要な動きを、音などの情報をもとに素早く判断するための「反応能力」や、瞬時に判断するための「変換能力」を発揮すると、体の使い方の幅が広がり新しい技術を覚えるスピードを高めることにも繋がります。イメージしている通りに体が動かせるのもあり、経験した事のないことでもスムーズに習得できるようになります。スポーツで必要な体の使い方や動きをマスターすることにも繋がってきます。

新たな動作や技術の応用力が身につく

同じような動きを何度も繰り返すのではなく、基礎だけでなく応用力が身につくのもコーディネーショントレーニングの特徴です。そのときに必要な変化を持たせながら反復していくこともあり、自然と応用力を高めることにもなります。
新しい発想が増えていくため、スポーツでも活躍できるようになるためにも必要な能力といえるでしょう。

競技のパフォーマンスが向上する

能力の一つである「バランス能力」が発達することで、不安定な場所でも正しい姿勢を維持できるようになります。バランスが崩れそうなときでも立て直せるようになるため、サーフィンのようにバランス感覚が重要になる競技の質を高められるようになります。また、筋肉と関節の動きを繋げることで「連結能力」を発達させ、複雑な動きも自然とできるようになってきます。

複雑な動作のコントロールが可能となる

能力のなかでも「識別能力」が高まると、体の部位の使い方や力加減などの調整がしやすくなります。例えばサッカーボールを蹴るときもそうですが、バットを使う野球でも力の加減がしやすくなります。ボールを早く投げたいときやゆっくり投げたいときなど、状況に合わせて器用に調整できるようになり複雑な競技や運動の質を高めることができます。また、結果としてケガをしにくくなるともいわれています。

【初級~中級】コーディネーショントレーニングのおすすめメニュー

コーディネーション能力を養うために、初級~中級向けのトレーニングメニューを5つ紹介します。
自宅でも気軽に取り入れられるメニューばかりですので、できるものから挑戦してみてください。

指折り遊び

指折り遊びとは、初級で誰でも取り組みやすいトレーニングです。
まずは両手を開きパーの状態にして指を順番に折りながら数えていきます。

  1. 両手を同時に親指から1~10までを数えていきます
  2. 次に両手を同時に小指から1~10まで数えていきます
  3. 左手は小指から、右手は親指から順番に折って数えていきます

その場でできるトレーニング方法になり、イメージした通りに体を動かすための能力といえます。
脳から出ている指令を指を使って伝えつつ、スムーズに動かしていきます。何度も繰り返すことで次第にスムーズに指が動かせるようになっていきます。

いろいろ歩き

いろいろ歩きとは、足のつま先やかかと、お尻を使ってさまざまな歩き方をする遊び方のことをいいます。できれば裸足になった状態でできるように、いろいろ歩きに挑戦するようにしてみてください。
以下では代表的なお尻歩きのやり方を紹介したいと思います。

  1. まずは両足を伸ばして座ります
  2. お尻を交互に体重をかけるようにして、腕を軽く振って前に10歩進みます
  3. 次に元の位置まで10歩お尻を使ってバッグします

いろいろ歩きに挑戦することで、体の筋肉や関節の動きをタイミング良く行えるようになるなど連結能力を高めることが期待できるようになります。

バランスストーン

バランスストーンとは、子どもが遊び感覚でできるトレーニングです。
一定の間隔で設置した石やブロックの上を一歩ずつ跳んで渡っていきます。川の上を渡るようなイメージで進んでいくと考えるとわかりやすいと思います。石は足場のようなものです。

  1. 石やブロックを一定の配置に設置します
  2. 下に落ちないように石やブロックの上を移動していきます
  3. 石の間隔を広げたり、数を増やして難易度を高めていきます

落ちたときやバランスを崩したときにケガをしないような場所にて行うのをおすすめします。
また、あえて不安定なブロックを用意して進んでいくのもポイントです。

ボールキャッチ

ボールキャッチとは、ボールを使ってさまざまな方法で投げたりキャッチするトレーニング方法です。
現代の子どもはボールに触れる機会が少なく、ボール投げが苦手な傾向にあります。そのため、ボールキャッチを行い、体の動きを覚えていくための方法といえるでしょう。

  1. ボールを頭の上に投げてキャッチします
  2. ボールを頭の上に投げて3回手を叩き、キャッチします
  3. その場で回転してボールをキャッチします

徐々に難易度を高めていき、すぐにはできないくらいのボールキャッチに挑戦してみてください。前だけでなく後ろの手でキャッチしてみるのもいいですし、頭の上に投げてヘディングしてキャッチすることも。自分にあった方法を探してみるのもポイントです。

お手玉

お手玉を使ったトレーニング方法もあります。主に動体視力を鍛えるためのトレーニング方法になり、最初は少ない数から挑戦していき、難易度に合わせて数を増やしていくといいでしょう。関節視野を鍛えることにも繋がるので、できることを続けていきましょう。

  1. お手玉を用意します。
  2. まずは1つからお手玉を投げる練習をします
  3. 慣れてきたのであれば2個交互、3個と増やしていきます。

お手玉を投げるときに上の高さが一定の位置になるようにしてください。また、お手玉ができるようになったら、他にもジャグリングなど掴むものが難しいものに挑戦してみるのもいいと思います。

コーディネーショントレーニングはどこで習える?

コーディネーショントレーニングを専門的に提供しているトレーニング施設もしくは、スポーツクラブが少ないので目にする機会も多くはないと思います。

また、あったとしても集団指導がメインになってくるため、人によっても運動神経の発達状況が大きく変わるゴールデンエイジ(9歳~12歳)には、適した指導法とはいえません。子どもに最適な指導を受けたいと考えているのであれば、プロからの個別指導が受けられるパーソナルジムをおすすめします。

対応しているかどうかが変わってくるため、事前に問い合わせをしておきましょう。

まとめ

コーディネーショントレーニングは、子どものときにこそ必要な方法です。神経回路が発達する時期にいろいろな運動を経験しているかどうかによっても、子どもの運動神経が変わってきます。自宅で気軽に取り入れられるものもあるため、実際に取り入れつつプロの指導を受けることも検討してみるといいでしょう。体の動かし方がわかると、さまざまなスポーツに活かせるだけでなく生活にも影響していきます。コーディネーショントレーニングを受けられるパーソナルジムも選択肢の一つです。